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東京高等裁判所 平成12年(行ケ)210号 判決 2000年12月05日

原告

株式会社全珍

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

被告

やまなか食品工業株式会社

代表者代表取締役

【C】

訴訟代理人弁理士

【D】

【E】

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1請求

特許庁が平成9年審判第1720号事件について平成12年4月20日にした審決を取り消す。

第2前提となる事実(争いのない事実)

1  特許庁における手続の経緯

被告は、「カライーカ」の文字を横書きしてなり、指定商品を旧第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」とする登録第2432634号商標(平成1年10月31日登録出願、平成4年7月31日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、平成9年2月6日、本件商標の登録無効の審判を請求し、特許庁は、平成9年審判第1720号事件として、これを審理した結果、平成12年4月20日に、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年5月22日に原告に送達された。

2  審決の理由

別紙審決の理由の写しのとおり、本件商標は、「カライーカ」の文字を一体不可分に書してなる造語であるから、商品の品質又は用途等を表示するものではなく、それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものと認められるとして、本件商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないと認定、判断した。

第3原告主張の審決取消事由の要点

1  審決は、本件商標を構成する「カライーカ」の文字は、各文字が外観上まとまりよく一体的に表現されてなるので、これを「カライ」の文字部分と「イーカ」の部分とに分離して観察しなければならない理由はなく、「カライ」の文字部分が「辛い」に通じる場合があるとしても、「イーカ」の文字部分が「烏賊」を意味するものとして、直ちに理解され、認識されるとはいい難いから、かかる構成においては特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして理解されているとはいえず、構成全体をもって一体不可分の造語を表現しているとみるのが自然である、と判断しているが、この判断は誤りである。

すなわち、本件商標の指定商品中には、烏賊を使用する加工食品が含まれており、この加工食品に付された「カライーカ」に接した一般需要者は、「カライ」の文字から「辛い」を直感するとともに、「イーカ」の文字から「烏賊」を直感するものであり、特にこの加工食品が「辛い味付けを施された烏賊を使用する加工食品」である場合には、本件商標は、当該商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというべきである。

そして、審決は上記の判断に基づいて、本件商標は、「カライーカ」の文字を一体不可分に書してなる造語であるから、「味覚が激しく辛い商品」の意味合いを容易に想起させるものとはいい難い、と判断しているが、前提となった上記の判断に誤りがあるのであるから、この判断が不当なことは明らかである。

2  仮に、上記の判断が認められたとしても、審決は、次の点で誤っている。

本件商標は、「激しく舌を刺激するような味である辛い」を「カライ」の文字で表し、続いて「ー」でこの辛さを強調するとともに、「自己の疑問をそのまま表現する助詞の『か』」を片仮名の「カ」で表したものであって、単に「味覚が激しく辛い商品」という意味合いを示すにとどまり、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、審決は、この点を看過している。

このことは、「コクナール」、「スグレータ」等のような標章で長音を除いて考察した場合に、商品の品質、用途、効能等を表示するものと認められるときは、商標法3条1項3号の規定に該当するという、商標審査基準からも裏付けられる。

また、「KARAI~KA」(商願昭61ー9666号)及び「からい~か」(商願昭62ー139233号)という先願商標の審査結果からも裏付けられる。

これら商標審査基準や先願商標の審査結果を考慮すれば、たとえ造語であっても、商品の品質、用途、効能等を表示するものと判断される場合もあり、「カライーカ」はこれに該当するものである。

審決は、この点を看過し、本件商標は、「カライーカ」の文字を一体不可分に書してなる造語であるから、これより「味覚が激しく辛い商品」の意味合いを容易に想起させるものとはいい難い、との誤った判断をしたものであり、不当である。

そして、審決は、上記の誤った判断に基づいて、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、商品の品質又は用途等を表示するものではなく、それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものと認定した点に違法がある。

3  よって、本件商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないとした審決は取り消されるべきものである。

第4被告の反論の要点

1  原告は、本件商標は、「カライ」と「イーカ」に分離されることを前提に、「カライ」から「辛い」を、「イーカ」から「烏賊」を直感し、本件商標は、「辛い味付けを施された烏賊」という意味を表示するにすぎない旨主張している。

しかし、本件商標は、その構成各文字が外観上まとまりよく一体的に表現されてなるものであり、これを「カライ」の文字部分と「イーカ」の文字部分とに分離して観察しなければならない理由はなく、「カライ」の文字部分が「辛い」に通じる場合があるとしても、「イーカ」の文字部分が「烏賊」を意味するものとして直ちに理解され、認識されるものとはいえない。本件商標は「カライイカ」ではなく、「カライーカ」である点に留意する必要がある。

よって、本件商標は「辛い味付けを施された烏賊」という意味を表示するにすぎない内容表示商標とはいえず、原告の主張は誤りである。

2  また、原告は、本件商標を「カライ」と「ー」と「カ」とに分離し、本件商標は単に「味覚が激しく辛い商品」という意味を表示するにすぎない旨主張している。

しかし、上記の理由から、本件商標を「カライ」と「ー」と「カ」の3つに分離する必然性はなく、よって、本件商標は単に「味覚が激しく辛い商品」という意味を表示するにすぎない内容表示商標とはいえず、原告の主張は誤りである。

そもそも、上記3つの分離が可能としても、「ー」が「辛さを強調」、「カ」が「疑問助詞」であるとして、「味覚が激しく辛い商品」という意味が何故導けるのか、被告には不明である。

原告が指摘する「コクナール」、「スグレータ」の標章は、長音を除くと、「コクナル」(濃くなる)、「スグレタ」(秀れた)となり、商品の品質、用途、効能等を表示するものといえるかもしれないが、本件商標は、長音を除くと、「カライカ」(「カライイカ」ではない。)となり、決して商品の品質等を表示するものとはいえない。したがって、原告指摘の商標審査基準と本件商標が登録されたことには何ら矛盾はない。

また、原告指摘の「KARAI~KA」(商願昭61-9666号)及び「からい~か」(商願昭62-139233号)も、前者は「~」により「KARAI」と「KA」が分離され、後者は「~」により「からい」と「か」が分離されているもので、これらの標章が拒絶されたことと、本件商標が登録されたことには何ら矛盾はない。

3  被告の主張は、次の登録商標の存在によっても正当であるといえる。

①  商標登録第4265148号「めんたいか」(乙第1号証)

この商標は「めんたいいか」ではない点に留意する必要がある。

②  商標登録第2502412号「おいしいか」

(乙第2号証)この商標は「おいしいいか」ではない点に留意する必要がある。

③  商標登録第4349092号「カラピリいーか」(乙第3号証)

4  以上のとおり、本件商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するものではなく、審決には何ら誤りはない。

理由

1  本件商標が、「カライーカ」の文字を横書きしてなり、指定商品を旧第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」とするものであることは争いがないところ、甲第2号証によると、本件商標を構成する「カライーカ」の文字は、同一の書体により同一の大きさで書されており、外観上まとまりよく、一体的に表現されていることが認められる。

そして、本件商標について、「カライ」の文字部分と「イーカ」の文字部分、又は、「カライ」の文字部分と「ー」の文字部分と「カ」の文字部分とに、それぞれ分離して観察すべき特段の理由はないから、本件商標は、その構成の全体をもって、特定の意味を持たない一体不可分の造語であると認めるのが相当である。

2  したがって、これと同旨の判断によって、本件商標は、商品の品質又は用途等を表示するものではなく、それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものと認められるとして、本件商標は商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないと認定、判断した審決に誤りはない。

3  なお、原告は、本件商標「カライーカ」が「辛い味付けを施された烏賊」又は「味覚が激しく辛い商品」を容易に想起させるものである旨主張するところ、「カライーカ」から「辛い」、「烏賊」あるいは「辛い烏賊」を連想することがないではないとしても、一般的に取引者、需要者が本件商標に接した場合、それが単に原告主張の上記意味を示すものとして理解するにすぎず、出所の識別標識としては認識しないであろうと推認すべき根拠は見いだし難い。

また、原告は、他の標章についての審査基準や審査例を挙げて、審決の上記の判断がこれらと矛盾している旨主張しているが、原告が指摘する標章は、いずれも本件商標とはその構成を異にしており、上記の判断の妨げとなるものではない。

4  結論

以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 橋本英史)

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